東博150年の記念展でも間違いなく出品される医心方。この度、修繕を終えた記念として30巻一度に見せる展示を行っている。
医心方は日本に現存する最古の医学書で、984年に丹波康頼が、中国の多くの医書を引用して病気の原因や治療法をまとめた大全書である。東博所有のものはオリジナルではないものの、書写されたもの全30巻がそろっている。各巻では病気の違いでまとめている。仁和寺も所有しているが、そちらは全巻揃っていない。
東博の2階の特別室2部屋を使っての全巻展示は、現代に通じる医学から、否定されたもの、迷信に近いものまで様々な医療行為を書き綴ったものを観ることができる。読みやすい丁寧な字で書かれており、参考書としては申し分ない。ただ、図解はほとんどなく、文字が読める教養人のための書となっている。
さて、この虎の巻は正親町天皇から典薬頭の半井光成へ下賜され、門外不出として代々受け継がれた。1854(安政1)年に幕府へ貸し出されたほかは、近年まで公開されることがなかったそうだ。そのすべてを一度に見ることができて、非常にありがたい思いだった。