三菱の至宝展が五輪と共にようやく開幕した。三菱財閥が誇る3つの展示館(+銀行の研究所)が所有している名品ばかりを集めた夢の展示会がついに始まった。
そもそもは三菱財閥が誕生して150年を記念した展示会ではあったが、コロナの影響で延期となっていた。身内で集めた品々を展示するのだから中止にはならないとは思っていたが、オリンピックが中止になったらもしかするかもとは想像していた。なぜなら、オリンピック憲章には「スポーツを文化、教育を融合させ」との文言があることから、文化面で三菱グループが総出で協力するため企画された面があるためで、151年目の開催となった。さすが、「三菱は国家(の礎)なり」と謳うだけはある。
三菱1号館美術館での開催で、この建物自体もジョアサン・コンドルの設計の洋館なので、それを観るだけでも目の保養になる。ただ、静嘉堂や東洋文庫が所蔵する和洋・中華的な品々が立派な洋館に合うのかが心配だった。初めに三菱財閥を築き上げた岩崎家4代の紹介がプロローグ的にあり、茶器の名品がおもてなし。やはり、洋館と茶道具はそれほど相性のよいものではなく、三菱1号館では洋画の展示に限ると思いをよぎった次の間で考えが一変した。
三菱財閥が集めた刀と和と大陸伝来の書が展示。洋風の室内に光り輝く刀は要塞内に飾られた武器で高貴な人の収集に相応しい品である。書もまた洋風建築には必ずある書斎で目を通している感じになる。
前期のみの登場する国宝・包永は奈良・東大寺付近で、鎌倉時代の作品。太刀だったものを寸法調整しているので、現在は横並びの真ん中に展示される古備前高綱とそれほど変わらない大きさだが、茎の穴の位置から推測する元の大きさは迫力あるものだったことが想像できる。少し湾曲する刀と漢字文化の書の展示は海外からの来場があれば文化体験には最高の場所となっていただろう。