国宝を観る

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国宝を楽しむため、いろいろ書いています。 勉強不足でも観れば分かる。それが国宝だ。

五大力菩薩像 有志八幡講

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4月以来の高野山。雨の中の桜を堪能したのが、つい先日のことだと思っていたが時の流れは年々早くなっている気がする。時を支配することはできないが、時を感じることができる。写真には写っていないがすぐ横に六時の鐘がある。同じ時間を知ることで人々に規律を与える。規律を正しくすることで移ろいを忘れる人々に鐘の音で変化を感じさせる。時の鐘はそんな情緒的な一面があるかもしれない。

春から梅雨になった高野山では高野山の名宝Ⅱ期がスタート。最初の彫刻ゾーン(普段は出口)はいつもと変わらない平安仏像たちで、紫雲殿への期待を高める。角を曲がると廊下から見える正面に五大力菩薩像の白描画が見える。巨大な仏画で、なら仏像館で展示されている金峯山寺仁王門の金剛力士立像ぐらいの迫力があった。白描でこの感動だから国宝の彩色の方は壮大な風景となっていた。

有志八幡講の五大力菩薩像は火災のため2幅が焼失し、現在は3幅となっている。それでも紫雲殿の壁一面を使って1幅がようやく入りきる大きさに、五大力菩薩が1体しか描かれていない。この迫力はⅠ期で見た阿弥陀聖衆来迎図の三幅で感じた世界観以上のインパクトがあった。1体1体が火を纏って睨む景色は3幅でもビビッてしまうぐらいだが、5幅すべて揃っていて観ていた人々は圧倒されて恐怖すら覚えてしまっただろう。密教と言えば加持祈祷のイメージがある。炎と菩薩がコラボした印象を具現化した祈祷が護摩業で、単なるパフォーマンスでは扱えない荒行なのだと視覚的に理解させる効果があったのだろう。

国宝拝観者たちの夢、それは千件越え。 毎年、国宝指定数が増えているので、容易にはなってきているものの、一つの目標である。 900件を超えた辺りから新規の拝見ペースが落ちているが、果たしていつ達成なるか。