凝然国師こと鑑真和上が亡くなって700年の大遠忌だから実現した展示会。出展リストを見ると後半に訪問したくなるラインナップだったので、前半はパスしたが、それが裏目に出た。昨年の経験を全く生かすことなく、緊急事態宣言が発せられて休館となってしまった。既視感とはこのことを指すのだと反省する。
そして、後半も終わる間際となったが緊急事態宣言は延長された。見ることができない幻の展示会リストに追加されるかもと想像したが、文化イベントや大型施設に関しては対策を徹底することを条件に開館が認められた。会期末までの5日間となったが無事再開し、早速京博を訪れた。
特別展のはずの鑑真和上と戒律のあゆみだが、企画展並みの人の入りだった。じっくり見るにはとてもよいが、残念ながら東京都の要請で再開できなかった東博の鳥獣戯画展が予約制となっていることを思うと少し寂しい入りである。
いつも通り京博の平成館での開催で、3階から順番に下るルートとなっている。まずは大陸で戒律の誕生した時の書たちが陳列。南海寄帰内法伝の残巻は京博所有の重文なのだが、国宝好きなので天理教参考館所有のものが出ていれば最高だったのにと、まだ見ぬ国宝を思い浮かべて次の部屋へ移動した。
3階のもう一室は絵巻物が主役。東征伝絵巻は鑑真和上の伝説を分かりやすく表現している。この巻物たちに囲まれて鎮座するのが金銅舎利容器、通称が金亀舎利塔である。舎利容器は釈迦の骨を安置するもので、寺院にとっては最も重要な仏具のひとつである。金色に覆われた塔型に造形されて、その塔の下には亀が背負うように存在している。この亀だが、形的にはすっぽんなので生命の強さを象徴しているように見えた。亀の歩みは遅いこと、時代に流されないが着実に進む戒律を守りながら人々を導くにふさわしい舎利塔となっている。