大和文華館は昨年の開館60周年記念の展示会以来の訪問である。この時に大和文化館所有の国宝を一度にすべて観ることができたが、所有物の名品の一挙展示だったのでそれぞれの陳列物が点々と配置されていた感じがした。そこで、今回のテーマである時系列でまとめた桃山・江戸に絞った展示会を観ることにした。
豊臣秀吉髻状に始まり、茶人の書状や茶器、桃山時代の煌びやかな蒔絵など江戸文化への導入となる作品があった。そして、江戸時代を代表する俵屋宗達や狩野探幽、岩佐又兵衛などの初期の作家から、尾形光琳、円山応挙、若冲、池大雅なども展示される豪華なラインナップとなっている。
そのなかで、ひと際大きな作品が国宝の婦女遊楽図屏風である。前回の一挙公開ではほかに目移りしてじっくりと観ていなかったが、今回は時間をかけて観賞した。着物の柄が派手ですべて違う部分は前も気づいたが、爪の淵に赤い彩色がつけられているのは初めて気がついた。女性はいつの時代もネールケアを大事にしていたのだろう。大きな作品なのに細かな点をきっちり描いて、当時の風俗を今に伝える。奈良博に比べるとそれほど広くない展示室なので、ゆったりじっくり見るにはとてもよい空間であった。