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【雪舟と玉堂】凍雲篩雪図 浦上玉堂

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文人画家の浦上玉堂は池大雅と共にノーベル賞作家・川端康成のお気に入り作家である。雪舟が注目を集める展示会だが、浦上家も負けてはいない。地階に設けられた第二会場は浦上玉堂を中心に息子の春琴、秋琴兄弟の作品を展示していた。

文人が嗜むべき4つ琴棋書画の内、最初のブロックでは琴が展示されていた。35歳の時に「玉堂清韻」の銘のある中国伝来の七弦琴を獲得したことから玉堂と名乗るほど、琴に秀でていた。画の方は独特で、点描で描き切る作品が多く、印象派のスーラの書き方を思い起こさせる。印象派の全盛期より少し前の時代に、日本において同じ技法の絵が大成していたこと自体驚きである。

国宝の凍雲篩雪図は入り口近くの角にあった。ほとんどの玉堂作品では背景は塗られていなかったが、国宝は薄曇りを演出するためにどんよりとして色に塗られていた。他の作品よりも細かな点描で描き切っているので、比較してみると別の作家が描いたようにも思える。脱藩して東北を訪れた時に描いたもので、凍てつく寒さは晴れの国・岡山からは想像超えた過酷さだったことが伝わる。

その他、書も若干あったが、息子である春琴・秋琴の作品がとても見ごたえがあった。琳派の系譜かと思わせる写実的で本物そっくりに描く春琴。片や父親に似た荒々しい風景を好む秋琴。度々親子企画展が各地で開催されるのも頷ける出来栄えで、見ごたえ十分な展示会だった。

国宝拝観者たちの夢、それは千件越え。 毎年、国宝指定数が増えているので、容易にはなってきているものの、一つの目標である。 900件を超えた辺りから新規の拝見ペースが落ちているが、果たしていつ達成なるか。