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【平安の書画】源氏物語絵巻 五島美術館

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根津美術館の庭園も素晴らしいが、五島美術館の庭園も見る価値がある。多摩川流域の縁に造られた日本庭園は勾配がきつく、根津のような平面的な庭園とは趣が全く違う。庭園を構成する木々はツツジ、枝垂桜など、季節ごとに花を咲かせるが、上から下からと立体的に見ることができる。ハイキングが如く昇り降りすると石仏が点在しており、それらを探すのも楽しみのひとつ。茶室も2つあり、急成長した東急グループらしい東武に対抗心むき出しの庭園となっている。

五島美術館の隣には創業家の五島家の家がある。普通なら根津のように都心の一等地に造りそうなものだが、阪急グループ創業の小林一三の薫陶を受けた慶太ならではの戦略がそうさせている。なにもなかった多摩地域発展のため、鉄道網を作り都市開発に全力を尽くした。人々の暮らしを豊かにするためエンターテイメントの施設として五島美術館はなくてはならないアイテムである。

その五島美術館は10年に1度、徳川美術館から借り受けた源氏物語絵巻を見せる一大展示会を開く。西暦でいうと0年が五島、5年が徳川の持ち回りで開催し、開館の周年記念として国宝の源氏物語絵巻を所有する両館だからこそできる企画展である。

しかし、今年はコロナの影響で五島美術館での源氏物語絵巻展は中止になった。大人気の企画展だけに、三密の危険性は高く断腸の思いでの中止だったのだろう。その代わりに五島美術館が所有する源氏物語を核として、平安の書画を集めた特別展を企画。同館が誇る、平安時代の書画を第1室で展示し、第2室には源氏物語絵巻を特別公開する気合の入れよう。同展示会にも多くの人が来場していた。

内容は装飾料紙に和歌を書写した「古筆」、貴族が愛好した雅な「絵巻」、優れた歌人の姿を描いた「歌仙絵」などで、もしこれ単独で見たのならば素晴らしいの一言だった。しかし、京博の皇室の名宝や佐竹三十六歌仙で同時代の名品ばかりを見てしまった、目が肥えてしまい、残念ながら感動が薄れてしまった。

しかし、源氏物語絵巻は別腹。現状保存と復元を並べた展示で1000年の歴史と1000年前の美しさを味わえる構成が心に響き、何度も往復して眺めてしまった。国宝の現物は劣化がひどくて常設展示はできないだろうが、復元されたほうだけでも常設展示してくれたら通い甲斐がある。

国宝拝観者たちの夢、それは千件越え。 毎年、国宝指定数が増えているので、容易にはなってきているものの、一つの目標である。 900件を超えた辺りから新規の拝見ペースが落ちているが、果たしていつ達成なるか。