国宝を観る

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国宝を楽しむため、いろいろ書いています。 勉強不足でも観れば分かる。それが国宝だ。

木造阿弥陀如来及両脇侍坐像 三千院

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京都観光で静寂を求めるなら大原の三千院だった。デューク・エイセスの「女ひとり」の歌詞では女性が寂しい旅をする雰囲気と合っていた。ただ、この歌の記憶にある人は昭和生まれ。いまや静けさとは程遠い賑わいのある観光スポットとなっている。

コロナ禍でインバウンド観光による外国人旅行者が減ったとはいえ、大原の人気は相変わらず。京都駅からバスで小1時間かかるにも関わらず満席状態(立っている人もちらほら)。秋の京都のイメージを作り上げたJR東海の「そうだ京都に行こう」キャンペーンCMの効果がまだ続いているのかもしれない。

バスで大原に到着して三千院を目指す。山の中にあるため参道は傾斜となっているがハイキング程度の登り。歩くこと十数分、寺院を示す石碑が登場した。すでに絵になる構図となっており、紅葉の素晴らしさはさすがだ。人気の観光地、京都観光の定番になるのも納得できる。

三千院天台宗のお寺で、青蓮院、妙法院(所管寺院に三十三間堂がある)とともに、天台宗の三門跡寺院の1つに数えられている。受付を済ませて建屋に入ると不動尊や元三大師など所々の祈りの場に鎮座していて静寂の雰囲気がビシビシ伝わってくる。しかし、それ以上に建物の隙間からこぼれる紅葉の美しさにより、心躍らされてしまい弾むように建物内を見学してしまった。

国宝は阿弥陀如来坐像と脇侍。3体は境内の中央に独立して建てられた専用のお堂内に鎮座している。写真のように周りを木々に囲まれ、静寂の中で人々を導いてきた。坐像の特徴は脇侍たちが少し前傾姿勢になっている点だ。仏像は直立不動や背をきっちり伸ばした坐像が多い。参拝者と同一に近い視線で拝むことができるためだ。また、大きな仏像は広い境内か広い堂内にあることが多く、距離を取って拝むことが可能なため視線を合わせるための調整ができる。東大寺の廬舎那仏の場合でもお堂に窓がついており、正月にはそこから仏さまが顔を出すことができるようになっており、回廊付近からだと視線が合った気になる。しかし、三千院阿弥陀如来坐像と脇侍は大きさの割にはお堂内はそれほど広くなく、外からもお堂が一段高く建てられているので正面を向いた像だと視線が合わない。そこで、人々に寄り添う形で前傾姿勢を取って頂いている。おもてなしの精神に通じるありがたい仏様たち。遠方の人々を呼び込むのもの、こういった日ごろの”姿勢”が大事なのかもしれない。

国宝拝観者たちの夢、それは千件越え。 毎年、国宝指定数が増えているので、容易にはなってきているものの、一つの目標である。 900件を超えた辺りから新規の拝見ペースが落ちているが、果たしていつ達成なるか。