芸術品や美術品は失われるリスクと隣り合わせとなっている。法隆寺の金堂壁画は不慮の火災により焼損し、金閣寺も放火により焼け落ちてしまった。広隆寺の弥勒菩薩像も右指を折られて修復された。大切に受け継いできた文化財も一瞬の行為が取り返しのつかないこととなってしまう。
花下遊楽図屛風は初めて見たが、国宝として違和感を覚えない人はないだろう。なぜなら6曲1双の屏風の右隻中央の2扇がないのである。なぜないかと言えば、修復の最中に関東大震災が発生し焼失したためだそう。修復という文化財を保護する最前線でも天災には勝てなかった。しかし、奇跡的に写真が残っており、現代技術により再現されたものが展示されていた。ちょうど上記の写真がその部分で、当時の人々が花見に興じる風俗画としてはとてもよく表した場面である。失われたものを再現する技術が高まった今日において、複製以上価値を持つ復活の美術展も面白い企画かもしれない。