興福寺で康慶作を見たからにはその後に作られた鎌倉彫刻最高傑作を見ないわけにはいかない。
東大寺の南大門を守護する金剛力士立像は運慶と快慶の作品である。リアルを超えた超リアルで、これまでの仏さまにはなかった筋骨隆々の武人タイプに作られている。これまでの仏師たちの武人は鎧などの着飾りをアイコンとして装着することで戦闘する印象を残していた。そのため、中身から迫力が感じにくく戦士というよりも大将など一歩下がった位置にいる司令官のように見えることがあった。しかし、南大門の金剛力士は衣しか纏わず肉体のみで強さを表現。超戦闘態勢の肉体美は最前線の戦士であることがはっきり分かる。また、8メートルを超える大きさがあり、人々を見下ろすことで畏怖感を植え付け、圧倒的な力の差を立体的に表現した最高傑作となっている。
この彫刻は1203年の南大門の完成に合わせて作られた。つまり、800年以上までに完成したものが、現代人にとっても変化なく見て分かる表現となっている。平家の焼き討ちにあった東大寺が再建するにあたり、南都の威信をかけた一大事業として完成させた。なので、武家たちも仏心には勝てない、再生のモニュメントとなっている。