国宝を観る

国の宝を観賞していくサイト

国宝を楽しむため、いろいろ書いています。 勉強不足でも観れば分かる。それが国宝だ。

不空羂索観音菩薩像 興福寺

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興福寺 南円堂

10月17日、興福寺の南円堂は年に1回この日のみ御開帳される。2020年10月17日は土曜日であったため、結構な人出が想像できた。そして、コロナの影響で入場規制がかかるのと、法要の12時~14時が入場規制されるという、拝観するには悪条件が重なっていたので、早めに参拝することにした。9時半頃に訪れると長蛇の列ができていた。ただ、昨年参拝した時は御朱印を求める列だったと思い出し、確認したが南円堂の方だった。雨が降っていたのと、コロナ対策の密を避ける(それでも密になっていたが)ため列が長くなっていたこともあり、30分ぐらいで南円堂へ入ることができた。

南円堂内には国宝彫刻しかない。とはいうものの11体(四天王像4体、法相六祖像6体、不空羂索観音菩薩像1体の3件指定)もある。新薬師寺の木造薬師如来坐像と塑造十二神将立像(宮毘羅大将像を除く)の12体が国宝や東寺の講堂の立体曼荼羅という国宝彫刻大量展示という例もあるが、興福寺の国宝彫刻はこれら以外にも多数あることから、国宝彫刻の宝庫であることは間違いない。

それにしても、南円堂に安置されているものは年1回しか拝観できないのはとても残念である。(もしくは年1回でもありがたいと思わないといけないかもしれない)

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不空羂索観音菩薩像(右)

さて、南円堂の主は不空羂索観音菩薩像である。3メートル越えの大きさ、秘仏であったため彩色や金工が残る豪華さ、手の込んだ緻密な彫刻などどれをとっても一級品。運慶の父で師匠である、康慶の一門による作品だが、全体の印象はどことなくふっくらとした定朝様式が残りつつ、衣など細部については写実を超えた劇画的な運慶スタイルが垣間見ある。四天王像や法相六祖は明らかにリアル路線へと変化しており、北円堂の無著・世親菩薩立像などにつながっていく。

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北円堂

昨年は西国33か所巡礼1300年記念で、南円堂の公開が延長されていたので、北円堂と同時に見ることができたが、今年は北円堂の御開帳は1週間遅れとなっていた。

南円堂からは三重塔(国宝)も上から見ることができる。

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三重塔

また、正面からは五重塔と東金堂が見える(写真は別の場所から撮影)ので、南円堂を一周する(実際は柵があってできない)だけで国宝建築が一望できる。国宝彫刻の一大集積堂であるばかりか、国宝建築を見渡せるお堂でもある。

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東金堂(左)、五重塔(右)

雨の中ではあったが、年に1回の会いに行ける仏像たちを堪能できた。

国宝拝観者たちの夢、それは千件越え。 毎年、国宝指定数が増えているので、容易にはなってきているものの、一つの目標である。 900件を超えた辺りから新規の拝見ペースが落ちているが、果たしていつ達成なるか。