新興宗教が拡大するにつれて、その開祖の自伝が書かれることがある。それが書籍だったり、絵物語だったりする。中世に起こり、現代まで続く有名宗教の開祖たちは絵巻物になって、その実績を伝えている。なかには国宝になっているものある。
その中で一遍聖絵は宗教家・一遍の波乱満ちた生涯に関する物語のほかに見どころがある。それは布教の対象とした一般庶民の生活が分かる風俗画としての側面である。
古来の宗教は己の修行と天皇を中心とした貴族に対して安寧を与える活動が中心で、宗教の大衆化には至っていなかった。そこに突如として現れたのが一遍上人で、識字率が低かった時代に踊念仏という見て分かりやすい表現で布教に励んだ。それを絵として残すことで、大衆に根差した一遍上人像がより際立つ表現となっている。2019年の春の京博では遠忌700年として一挙公開があった。