日本絵画の肖像画部門があれば、間違いなくナンバーワンの作品は伝源頼朝像である。髪の毛一本に至るまでの緻密な描写と、迫力ある大きさは掛け軸状の肖像画の多い日本画において他を圧倒している。ヨーロッパの肖像画に比べても、背景の派手さでは負けてしまうが、人物描写ではルネッサンス以降の作品に比べてもそん色がない。最近の研究で足利直義であるという説が台頭してきているが、書かれた人物が誰であろう作品のすばらしさには変わりがない。
5月のゴールデンウィークの時期に神護寺で虫干しのため公開されているが、今年はコロナの影響で中止になった。青葉の季節が来るのを楽しみに待つ。