春の京都非公開文化財特別公開で国宝そのものの公開ではないが、見ておきたい国宝複製物がある。聚光院の方丈障壁画は狩野永徳とその父である松栄が書きあげた傑作。狩野派独特の木のうねりとそれに呼応する山々の風景が随所にみることができ、シュールリアリズムにも通じる誇張した表現が味わえる。
文化財である国宝と、寺宝として国宝。その両天秤にかけた時、国宝そのものを普段使いしてもよいのかという疑問に行き着く。建築物ならば置き換えようもなく仕方がないのでそのまま使うし、美術品や書、巻物類は保管庫に置いておき、傷まない程度に公開する配慮ができる。それが建物に付随するものなら、どうすべきか。その解決方法として技術の進歩で高精細の複製が可能になったので、それに置き換えるのもひとつの手であると思う。特別公開の方丈で見ることができるのは複製。劣化を恐れることなく公開できるのはメリットである。
叶うなら、特別公開をするタイミングで京都国立博物館に寄託している本物を公開してほしい。複製で雰囲気を味わい、本物を堪能することで脳内補完による国宝が元の位置にあったころを想像できる。