住友財団修復助成30周年を記念した展示会が全国3地域、4カ所で行われている。修復事業の発表展示はたまに見かけるが、展示が東京・京都・九州と全国に分かれて開かれるのは聞いたことがない。21世紀に入って金融機関の合併が相次ぎ、それに付随する産業界でも合従連衡が進んだため、旧財閥単位での活動が薄まりつつある。そのなかで住友財団の支援事業が現在まで続いているのは、君臨すれでも統治せずの住友家があったからできたことかもしれない。
さて、開催地は東博、九博の国立博物館に加え、住友家が蒐集した美術品を展示している泉屋博古館(京都)とその分館(東京)の4カ所。スタンプラリーでもすればかなりの数の応募がありそうだが、展示内容が助成の発表なので、大々的なパフォーマンスはできないのだろう。
京都では神護寺の山水屏風が展示されていた。かなりの朽ち具合で、修復後でも「これが国宝」と思うぐらい、ぼろぼろ。数年前に国宝指定を受けた金剛寺の山水屏風は美術品としても観ることができたが、神護寺のものは歴史的遺産に近い。密教系の儀式に用いていたそうで、発祥の地・中国を連想させる屏風を置いて雰囲気を出していたのだろう。そして、神護寺の方が頻繁に行った結果、ぼろぼろになったのかもしれない。修繕事業ではなるべく元に戻す作業をする。そのため、研究の結果、屏風の配置が違うことが分かり、元の位置に換えていた。もし可能ならCGなどで再現したものができていれば見方も変わるかもしれないが、それはまた別の話になるのだろう。