文化財は常設や定期的な公開が決まっているもの以外は一期一会の可能性がある。ましてや国宝クラスだと数年に1度公開されればよい方で、定期公開が20年以上あるものもある。
公開情報で常設展示場をもっている収集家(企業)場合は順繰りでの公開に期待ができる。しかし、個人蔵の場合はそうはいかない。ましてや、公開に消極的な持ち主だとほとんど目に触れることがない。
九博が購入した則房は公開に消極的だった事例で、新収品展が60年以上ぶりの一般公開だった。個人蔵の刀は寄託しているものを除くと公開されることは希で、相続などで流出しない限り見ることができない。
なので、今回の展示で観た則房をそれ以前に見た人はほとんどいない。しかし、名品であるとの話だけは伝わっていたので、文化財の鑑定者などは観ていたのかもしれない。名品とあるが、人の心を写す出来栄えだ。美しい刃紋が日本海ぐらいの荒れ具合で、観る人の気持ちでいかようにも変化しそうだ。また、その反り具合から刀身を見ていると太く大きく感じ刀の大きさ以上に迫力がある。一文字派最盛期の綺麗で豪華を体現した作品だ。九博の所有となったことを機会に、多くの目に触れることを期待している。