九州博物館では室町幕府展が開催されている。室町時代は大陸との貿易が大成功したことから文化が開花した時代である。足利義満が建てた金閣寺や義政が築いた東山文化など、現代の日本美術史の黄金時代の一つである。
しかし、今回のテーマは室町幕府。派手な文化財より室町期の足利家に関係する資料を中心に展示している。なので、地味な書や肖像画、遺留品などが多く、絢爛豪華な室町文化の展示会とは程遠い。地味であるが故に見る方もじっくりと見てしまう。開会した3連休に行ったこともあり展示している前には列ができていた。
その中で、一番印象の残ったものは宝積経要品だった。何の変哲もない書ではあるが、書いた人がすごい。天龍寺の開祖・夢窓疎石で、大陸との貿易を薦めた中心人物で天龍寺船によって莫大な利益をもたらした。そこに足利尊氏と弟の直義が揃って筆を取っている。
この3人がそれぞれ字体が独特で、疎石は禅僧なのでお手本のような綺麗な字で書いている。尊氏はお世辞にもうまいとは言えず、横長に偏平がかかったような文字を書く。一方で行政手腕の高い直義は読みやすい字で、丁寧に書いてあった。室町幕府発足に関わるビック3の書はこの展示会にふさわしい(これに高師直がいれば勢揃い)。それにしても前田育徳会の国宝はいいものが揃っている。