最近の東博の特別展は仏教系展示会の開催が多い。今回は東寺展で密教(東密)の真髄を披露する展示となっている。
まず、展示会の出品リストをみるとほとんどが東寺からの出展で少しだけ京博と京都府のものがあるのみ。他の仏教系の展示だと系列の寺院から寺宝をかき集めて初めて成立するのだが、1つの寺院だけで展示会が成立する数のお宝を保有しているのはなかなかない。ただし、展示の方法が後七日後修法の祈祷場所の大掛かりな再現や、仏像の360度観賞用にゆったりと配置するなど、出品点数はこれまでの仏教系展示会に比べてそれほど多くない。
さて、会場でいうと第二会場の彫刻部は現地で観た方が迫力が感じられた。なぜなら立体曼荼羅として計算された配置での拝観に意味があるためで、個別の彫刻として見ると運慶展に及ばない。ただ、この機会を逃すと間近で見ることができなくなる。これらの平安彫刻があって初めて慶派が誕生するに至るので、空海の理想郷が奈良仏師の覚醒につながる重要な彫刻であるのは間違いない。
真言宗の宗派確立に尽力した七祖を描いた真言七祖像。空海を入れて八祖とすることもあるが、7祖はすべて外国人だ。インドから中国に渡る間に布教した教祖たちを讃えるために作られた。5幅は唐で作られたとされ、残りの2幅は空海が日本に戻ってから作らせた。すでに、奈良仏教が布教していて、鎮護国家の祈祷する役目を取り込むため、仏教発祥のインドから由来する真言宗の正当性を誇示する図なのだろう。真言系で伝わる七(八)祖像の元となる貴重な人物画であることは間違いない。