嫁入り道具が国宝になる。いまや死語となりつつある嫁入り道具。形式的なものは残っているものの、昔のような”嫁に送る”ため、家具などの一揃えを買って持っていくことはなくなった。少し大きな都市に行けば格安家具屋は道路沿いにあり、食器類も100円均一ショップに売っている時代、良い意味で調度するのが楽になった。
だが、江戸時代、それも征夷大将軍の娘ともなると婚礼調度品は贅の極みで揃えられる。それぞれ単品でも黄金に輝く一級品の蒔絵美術品だ。それが同じ源氏物語の初音を主題にして一式作られている。まるで絵巻物を見ているような仕上がりで、現在再現するならいくらかかるのか想像もできない。どれだけ娘を愛していたかの最上級の表現方法だろう。