年始の1月1日から3日まで公開している国宝としては薬師寺の吉祥天像が有名である。そして、同時期に自由に見ることができる国宝として獅子窟寺の薬師如来坐像がある。予約を入れれば誰でも見ることができるが、せっかく開放しているのだから、見に行くほかに手はないと、元日に出向く。
ブログなどで見る獅子窟寺の感想が、急こう配のことがとにかく多い。寺へ行くまでが大変なことが薬師如来との対面以上に心に(体にも?)残るのだろう。地図で見る限り駅から1キロちょいというところだが、前半は軽い坂道で半分を過ぎたあたりから、断崖のような坂が目の前に現れる。山を切り開いて歩道を作ったようで、400メートルほど登るという急こう配。まさに修験道が目指した寺である。
登り着る手前には護摩堂跡があり、頂上に本堂が見えてくる。正月なので地元の方がお茶の接待をしたり、本堂のお賽銭箱の横には参拝祈念品?の入浴剤が置いてあったり、正月気分を少しでも味わえる独自の取り組みをしていた。
さて、メインイベントの国宝仏について、見る前に気になる点があった。「本日は自由に拝観できる」旨の立て看板が境内の要所においてある。しかし、ここまで来る人はほとんど知っているので、むしろ駅前や参拝道入り口などに置いておくべきなのだろう。なので、参拝者は十数人。ほぼ家族連れだったが、中にはこの日のことを知って国宝仏を目当てに来ている人もいた。なぜ、国宝仏目当てかと分かるかというと、国宝の薬師如来坐像を収めている収蔵庫前で、見終わった瞬間に国宝に興味のない方が坂道の大変さを口々に言っていたためだ。(片割れはじっと耐えていた)
薬師如来坐像は平安初期の一木造りで、定朝作のようなふくよか感がまだなく、がっしりとした体格である。光背の仏像も規則正しく作られており、如来坐像の基本形といったところだ。ここから、いろいろな技法を用いて仏像彫刻の飛躍が始まると思うと、非常に貴重なものである。