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【奈良博】春日大社のすべて

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奈良国立博物館奈良公園の一角にある。ところが、公園がどこからどこまでなのかはわかりにくい。なぜなら公園に整備される以前からある寺社仏閣が多数存在し、境目がない。もともと興福寺の領地だった場所が公園として整備されたためだろう。また、道路を渡ると東大寺があり、春日大社がある。これらも自由に散策できるので、神域のはずが森を散策するぐらい気軽にいけるので、公園といっても疑う人は少ないだろう。そんな自由な奈良駅周辺だが、ここが都であったり戦場になったというのは想像しにくい。春日大社のすべてではそれら俗世的な部分はあまり紹介されていない。春日信仰を中心に展示していた。

春日大社平安時代に栄華を極めた藤原家ゆかりの神社である。公家、つまりおおやけの家系を作り上げた貴族の中の貴族の家柄が信仰した神社であるため、お宝は豊富にある。ところが、お宝類は神社の式典にかかわるものが中心で、南都焼き討ちの際に再興した源氏からの武具の寄贈が一部ある程度で、中世以降のお宝はほとんど出品されていない。まさに藤原家の栄華を極めた時期に合致している。

今回の展示物は先日の式年遷宮時に建てられた国宝殿に少しずつ展示されて来たものが多く、新鮮味が少ない。毛抜形太刀や蒔絵箏など春日大社に通っていると遭遇したものばかりだ。今回の展示で個人的な目玉は鹿島神宮の直刀・黒漆平文大刀と香取神宮海獣葡萄鑑だ。大刀は本当に大きく、漫画のブリーチで振り回してもおかしくないインパクトがあった。直刀であるため、ベルセルクのガッツのように背負って持ち運ぶと鞘から抜けないので、巨人用のものだったと想像力を掻き立てられるが、実用ではなく奉納品だったのだろう。鑑は様々な動物の立体的な意匠が特徴で、デザインでこれだけ起伏があるものはそうそうない。

展示会で注目を集めたのは鎧と胴丸。前半に行ったので、竹虎雀飾の細かな細工は甲冑に施すには勿体ない細工で、それだけでも十分国宝クラスになりそうだ。この甲冑の奉期が鎌倉の源氏からで、先日訪問した称名寺春日権現関連の資料が同展示会にも出品されている。南都焼き討ちによる平家との対立を源氏が支援するということで、思惑が一致したためだろう。

室町時代以降の春日大社がなぜ注目されなくなったか。藤原家中心の政治から天皇親政、下克上、武家の長期政権が続き、公家が信仰している神社まで関心が及ばなくなったためだろう。春日大社のすべてと題しているが、その注目せれなかった時期も少し触れてほしかった。

国宝拝観者たちの夢、それは千件越え。 毎年、国宝指定数が増えているので、容易にはなってきているものの、一つの目標である。 900件を超えた辺りから新規の拝見ペースが落ちているが、果たしていつ達成なるか。