3月、大阪・中之島に都市型美術館・香雪美術館が誕生した。関東では珍しくなくなった複合施設内の美術館だが、全国的にはまだまだ珍しい。この美術館は芦屋にある朝日新聞の創業の村山家が蒐集した美術品を展示している香雪美術館の兄弟的な存在で、ビル内に茶室を完全再現する力の入れようである。展示室の奥に、朝日新聞と國華という美術誌の関りが分かる展示コーナーが設けられている。なぜ、朝日新聞が國華を発行しているのかは見てのお楽しみとして、その國華の創刊130周年、朝日新聞創刊140周年記念の展示会が東博て行われている。
國華はかなり尖った美術誌で、論評はもちろん印刷の仕上がりまで、未開の地を歩んできた。そんな誌面で紹介されてきた作品が展示されている。入口からすぐは仏像群が出迎え。運慶展、仁和寺展と仏像のオールスターを同じ場所で観てきたので少々物足りないラインナップだった。しかし、続く間の普賢菩薩騎象像(大倉集古館所蔵)と普賢菩薩像(東博所蔵)のコラボはなかなか見ることのできない配置。彫刻の後ろに掛け軸と直線上に国宝2点はいつまでも見続けられた。初めて見る騎象像は塗装の剥げた部分から木目が観えており、それすら計算された彫刻であることが見て取れる。像に合う木を探すのにどれだけの時間をかけたのか計り知れない。
土佐派や狩野派など王道の絵師とは一線を画す雪舟、宗達、若冲と個性派作家を取り上げたことも國華の特徴。完成度の高い製作集団の技術を個性で突破する爽快感が作品の端々から伝わる。
そして、日本美術の王道である古典的テーマで集めた作品へと続く。八橋蒔絵螺鈿硯箱(東博所蔵)は、豪華な蒔絵にも関わらすテーマがしっかりしているためか派手さをあまり感じず、日本的よさがでている。洛中洛外図屏風(舟木本、東博所蔵)の作者である岩佐又兵衛は再注目されている作家で、洛中の日常が生き生きとところ狭しと描かれている。現存する建物や大仏殿のように無くなったものもあり、京の盛衰が見て取れる。
1000年以上続く日本美術の多様性を観る絶好の機会であった。これが10年前なら國華らしいと思えたかもしれないが、若冲ブームに始まるここ数年の日本美術ブームの中にあっては(本来は先行しすぎていたのに)後追い感があった。岸田劉生もよいが最後のコーナーぐらいは尖った作品で締めてほしかった。