国宝を観る

国の宝を観賞していくサイト

国宝を楽しむため、いろいろ書いています。 勉強不足でも観れば分かる。それが国宝だ。

聚光院障壁画 聚光院

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コロナ禍の緊急事態宣言を受けて、延期されていた京の冬の旅がようやく始まった。

本来の京の冬の旅は1月に始まり3月中旬で終わるところが多かったが、延期分を丸まるとまではいかないが4月初旬まで期間を伸ばして公開している。普段は公開していない寺院を中心に周って見学した。その中で聚光院は国宝の方丈障壁画で有名。狩野松栄、永徳によって描かれた水墨画で、本物は東博の桃山展に出展されていた。

数年前に複製画が完成したことから、今回見たものはすべてコピー。コピーとはいえ本物そっくりに作られているためか、そこにあるだけで方丈内は凛として雰囲気を醸していた。ただ、方丈内に立ち入ることができないので、間近で見ることはできなかった。

南禅寺の方丈にも狩野派による作品がならんでいるが、そちらはカラーで金箔をふんだんに使用している。作風はとても似ているので合わせて観たくなる。

【きもの】御神服 鶴岡八幡宮

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2020年初夏、東博で開催した特別展「きもの」はコロナ禍で開催期間が変更となったが無事に終了した。当初の予定で開かれていた場合は見に行く予定がなかったが、会期がずれたお掛けで見ることができ、圧巻の展示物の量にとても感動した。

さて、当時を振り返るといつ開催されるか分からない、もしかしたら開催されないまま中止になるかもしれない展示会だった。その中で、いつ来場者が来ても良いように準備は進めれた。誰もいない展示会場。せっかくの準備した展示をどう観せるか。その一つの回答が動画で撮ることだったのだろう。撮影された動画は権利関係で広く公開することは難しいはずだが、そこは調整して東博のきもの展のサイトにアップされた。

現地で見た時に比べるときもののそれぞれの刺繍のアップなど肉眼で見る以上にきめ細かさが伝わってくる。また、テロップが入ることで、何気なしに見ていた着物たちのストーリーがいっしょに分かり、単に見る以上に知識欲を満たすことができた。ただ、最後のコーナーにあった大量の現代のきものを陳列したものはどうしても画角の関係で圧倒的な物量感はまでは表現できないので、やはり現地で見ることが出来てよかった。

振り返ることができる動画は2023年の3月末まで公開している。国内より海外を意識した展示会だったと思うので、ぜひ訪日ができない日本フリークたちに見てほしい。

【雪舟と玉堂】凍雲篩雪図 浦上玉堂

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文人画家の浦上玉堂は池大雅と共にノーベル賞作家・川端康成のお気に入り作家である。雪舟が注目を集める展示会だが、浦上家も負けてはいない。地階に設けられた第二会場は浦上玉堂を中心に息子の春琴、秋琴兄弟の作品を展示していた。

文人が嗜むべき4つ琴棋書画の内、最初のブロックでは琴が展示されていた。35歳の時に「玉堂清韻」の銘のある中国伝来の七弦琴を獲得したことから玉堂と名乗るほど、琴に秀でていた。画の方は独特で、点描で描き切る作品が多く、印象派のスーラの書き方を思い起こさせる。印象派の全盛期より少し前の時代に、日本において同じ技法の絵が大成していたこと自体驚きである。

国宝の凍雲篩雪図は入り口近くの角にあった。ほとんどの玉堂作品では背景は塗られていなかったが、国宝は薄曇りを演出するためにどんよりとして色に塗られていた。他の作品よりも細かな点描で描き切っているので、比較してみると別の作家が描いたようにも思える。脱藩して東北を訪れた時に描いたもので、凍てつく寒さは晴れの国・岡山からは想像超えた過酷さだったことが伝わる。

その他、書も若干あったが、息子である春琴・秋琴の作品がとても見ごたえがあった。琳派の系譜かと思わせる写実的で本物そっくりに描く春琴。片や父親に似た荒々しい風景を好む秋琴。度々親子企画展が各地で開催されるのも頷ける出来栄えで、見ごたえ十分な展示会だった。

【雪舟と玉堂】四季山水図巻 雪舟等楊

f:id:kokuhou:20210303200300j:plain]約16メートルある雪舟作・四季山水図巻。毛利博物館では毎年秋にすべてを開いて見ることができる。そして、岡山県立美術館でも巻物すべてを一気に見ることができた。

展覧会のメインビジュアルに使用されていることもあり、一番人気で見るために長い列ができていた。岩肌の独特な書き方や、パースがおかしい建物、水墨画とは言いつつもところどころに彩色があるなど、観ていて楽しい作品である。

一枚の巻物に春夏秋冬の変化とともに、大陸で見たであろう風景を学んだ画風に落とし込んだ雪舟ならではの作品に仕上がっている。うまい画家は宮廷画家などたくさんいるし、個性的な作画をする人も多い。そのどちらからも評価されるのが雪舟で、上手な中に個性を埋め込んだ画聖の名にふさわしい書きっぷりである。

雲谷派が画風を引き継いでいるが、時代と共に主流は狩野派琳派など派手なものへ遷る。質素な禅文化の隆盛期に現れた天才・雪舟。生まれる時代が違えば、水墨画以外の傑作が数多く誕生していたかもしれない。 

【雪舟と玉堂】破墨山水図 雪舟等楊

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雪舟と玉堂展に出展している国宝の中で唯一、後期にしか見ることができないのが破墨山水図である。他の作品に比べて絵の上に書かれている賛の数が多い。数えで76歳の時に雪舟が書いた山水図に、京都五山の有名な詩僧6人の題詩が書かれており、雪舟の評価が当時から高かったことを覗わせる。

また、雪舟が大陸に渡り画業を極めたことや、日本国内でも如拙や周文の画を受け継いでいることなど、自慢が書かれていることから真筆であることに疑いようのない貴重な作品である。

 

【雪舟と玉堂】慧可断臂図 雪舟等楊

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岡山県出身者には多士済々の文人墨客がいる。その中でも際立っているふたりを取り上げた展示会が岡山県立美術館で行われた。ひとりは雪舟、もう一人は浦上玉堂。浦上玉堂については息子の春琴・秋琴作品も多く展示していたので浦上家を取り上げたと言ってもよい。

県美を全面的に使用した展示会は第1会場が主に雪舟、第2会場が浦上家の作品展示で最後のコーナーだけ県美所蔵品を展示していた。

コロナ禍ということで空いていると思っていたが、それぞれの作品を見るためにノロノロ歩きの列が出来るぐらいだった。日時指定などはなく、久々に列へ並んでの見物だったので新鮮な感覚だった。

さて、雪舟の作品が国宝には6点あり、そのうち5点が展開に出品。後期に行ったため秋冬山水図は見ることができなかったが、国宝展以来の雪舟の国宝一気見だったので興奮した。

なかでも慧可断臂図は約210点が陳列された京博の国宝展でもメインビジュアルのひとつになるぐらいインパクトのある水墨画である。とくに現物の大きさは書籍で見るそれに比べ物にならないぐらい、強い印象を与える。人物描写は等身大より若干小さいが修行する達磨大師の達観した表情と、その信念に心打たれて弟子入り志願する慧可が腕を切り落して訪れる瞬間を悲壮感なく描き切っている。雪舟独特の岩や、服装に薄墨を使うなど”らしさ”が際立つ作品である。

金銀鍍透彫 宝相華文華籠 神照寺

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大阪市立美術館天王寺公園内にある。同場所は明治時代に開催された第5回内国勧業博覧会の会場として利用され、動物園があったり、大阪の象徴・通天閣がそびえたっていたり、一大テーマパークとなっている。

この大阪市立美術館は住友家の本邸跡地の寄贈を受けて建てられた。民間所有の土地に建つ美術館のためか、コレクションは市民からの寄贈が多い。戦前は東洋のマンチェスターとの異名がつけられるほど発展した大阪市。人口でも東京市を抜いた時期があった。その名残なのだろう。大旦那衆による美術品の収集も盛んで代替わりを機会に寄贈されるものが所蔵品に多い。

さて、コレクション展はなかなか逸品揃い。田万コレクションを中心の日本の工芸品や、焼き物では田原コレクションの九州の焼き物が陳列されていた。しかし、大阪市立美術館は国宝を所有していない。なので、コレクションではないが展示内容に合った国宝が登場。神照寺の宝相華文華籠と熊野速玉大社の古宝神類がそれだ。熊野速玉大社のものは度々展示されていて目新しさはない。神照寺も場所は違うが度々見ている。しかし、奈良博や京博などに比べると少し薄暗い空間で見るので雰囲気はバッチリ。違う空間で見るのも悪くない。

 

国宝拝観者たちの夢、それは千件越え。 毎年、国宝指定数が増えているので、容易にはなってきているものの、一つの目標である。 900件を超えた辺りから新規の拝見ペースが落ちているが、果たしていつ達成なるか。