ゆったりとした時間が流れる中国大陸の雰囲気そのままに描かれた水墨画。国土の狭い日本にはない広々とした風景を狭い紙面にどう描くかが腕の見せ所。すべてを描かないで描いた部分から想像させるテクニックが秀逸である。
日本水墨画界の巨匠である雪舟は中国大陸に行ったことが終生の自慢だった。大陸から輸入した水墨画を模写することで技術の向上は図れるかもしれない。ただ、その先のオリジナリティーの部分は難しい。国内だけでは作りえない体験があってこそ国宝を6点も生み出せた。後の水墨画での静けさの極致である長谷川等伯の松林図屏風は牧谿観察が集大成で、個性は雪舟に軍配が上がる。
そんな日本水墨画に多大な影響を与えた中国画壇だが、南宋の皇帝である乾隆帝が文化に造詣が深く、花開いた時代でもあった。瀟湘臥遊図巻は愛蔵品した4名巻のひとつである。