開祖・円珍が唐への留学中の855 年に,青竜寺の法全 から授けられたインド伝来の世界最古の金剛界曼荼羅。色着いていない墨の線だけで描かれた白描図像で、曼荼羅の図解本、いわば虎の巻である。
比叡山(山門派)が修行場のパラダイスであるに対して、園城寺(三井寺)を総本山とする寺門派は修験道と融合した自然相手の修行スタイル。鍛え上げた修行僧の証を授けることが出来たのも、三井寺に虎の巻があったからこそかもしれない。天皇家の産湯としての聖地に加えて、中国では一番高貴な色である黄の不動を本尊にして格式高い灌頂場となっている。
この五部心観は境内で一般公開されるのが初めてだそう。三井寺の文化財収蔵庫は勧学院の襖を現状保存している関係で、展示スペースが限られている。たくさんの国宝クラスのお宝もなかなかお目にかかることがない。客殿での虫干しを開催してもおもしろいかもしれない。