国宝を観る

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国宝を楽しむため、いろいろ書いています。 勉強不足でも観れば分かる。それが国宝だ。

寒山拾得図断簡 因陀羅筆 礎石梵埼賛 東京国立博物館

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広島県では二つの400年にまつわる展示会が開催されている。県西部の安芸の国では福島正則改易後、浅野家が入城してちょうど400年目にあたる展示会を開催している。

浅野家といえば赤穂の匠頭が知名度に勝るが、そちらは別家で宗家は安芸広島藩城主である。豊臣家の重心だった福島の後を継ぐ形で入城した浅野家は、毛利や島津など西国の大名たちの防波堤となる地政学的に重要な場所を任されていた。にも拘わらず幕末では薩長同盟に加わる薩長芸三藩同盟を締結し、幕府討伐に尽力した。

勝利者側であるはずの浅野家ではあるが、薩長土肥の中には入れずに明治以降の存在感は低下。その影響もあって、同家所有の家宝たちは散逸していくことになった。今回の展示会ではそんな浅野家所有物だったものを集めた。珍しかったのは掛け軸などを保管する箱を展示していたこと。箱の良し悪しや箱のための箱などを作るなど作品のレベルが保管方法で分かるようになっていた。浅野家の文化財に対する造詣があればこそである。

国宝は後期の寒山拾得図のみ。裁断されてもなお5つが国宝と言う代物で、所有者もばらばらというもの面白い。三十六歌仙の佐竹本展が開かれているが、断簡を集めるのは至難の業。学芸員の努力の賜物だと思う。国宝の土偶大集合、佐竹本の次は、中国の水墨画を集めて国宝・寒山拾得一挙公開を期待したい。

さて、禅の題材として好まれた寒山拾得。独特の顔の表情が妖怪もしくは「くしゃおじさん」に見える。日本の水墨画の達人たちも同様の題材で多く描いているが、ユニークな表情を除けば面白みに欠ける。画家ではなしえなかった禅画の退屈感打破は、白隠のような発想がぶっ飛んだ表現者を待たねばなるまい。

国宝拝観者たちの夢、それは千件越え。 毎年、国宝指定数が増えているので、容易にはなってきているものの、一つの目標である。 900件を超えた辺りから新規の拝見ペースが落ちているが、果たしていつ達成なるか。