京都国立博物館に昨年から展示されている安祥寺の五智如来坐像が文化庁から平成最後の国宝指定の答申を受けた。それの前に同じ場所に鎮座していた金剛寺の大日三尊も国宝になったので、1階の彫刻展示コーナーは国宝候補お披露目の間と言ってもよいかもしれない。
五智如来坐像は平安初期の作品で、調査では851年から859年の間に作られたと考えられている。造られた時期がおおよそでも分かればそれが基準に他の仏像の年代も推測できるので重宝される。また、定朝により確立されたふくよかな浄土系仏像以前の恰幅はいいけどところどころ鋭い部分のある初期密教仏像の特長がある。仁明天皇の女御だった藤原順子が開いた安祥寺のためか仏像の表情は穏やかで見ていると安らぐ。
保存・修繕のために寺を飛び出して一時寄託されたものは調査も同時に行うので、新発見があった場合は国宝昇格に繋がることがある。千年以上前に作られたものを次の千年に繋ぐ重要な作業である。そのすき間を縫うように博物館で展示しているのでこの時ならではの貴重な時間の共有である。