国宝の梵鐘はほとんどが寺社の所有である。現役のものもあれば、二代目に現役を譲り引退、陳列展示されているもの、特別に建屋が作られ保管されているものなど、様々な扱いがなされている。
国宝梵鐘にあって、異彩を放つのが佐川美術館か所有する梵鐘である。宗教的な意味合いでの梵鐘の扱いは皆無で、美術品として陳列される。なので、常設ではなく、テーマにあった展示があった時のみ展示がある。今回、平山郁男の仏教をテーマにした展示の一環で久し振りの展示があった。
ちょうど平山郁男の延暦寺の絵たちの中心に梵鐘が陳列されていた。のっぺりとした表面に、鐘を釣り上げる部分のみ意匠がある程度。しかし、鐘の中に来歴が書かれているため、国宝につながった。美術品として、それ程素晴らしさを感じないが、延暦寺の歴史が染み込んだ梵鐘と思うと感慨深い。