国宝の保有分布では東京都が多い。続くは京都、奈良になるがともに都が長くあった土地で、それゆえに多いのだろう。東京にある国宝の多くは東博や文化庁などの官公庁保有物が含まれることや、首都となった明治以降に地方の有力者が移り住んで持ち込まれたものが多い。
その中で、古くから寺院などで大切に保管されていた、正真正銘の東京都の国宝のひとつが深大寺の釈迦如来像である。東日本最高仏像で大陸からの風土が色濃い白鳳文化を感じる仏像である。横長の目は法隆寺や飛鳥寺の仏像たちに似ている。賽銭300円を参拝料として納めるとガラス越しに釈迦堂で見ることが出来る。少し遠くに感じるが、穏やかな表情はいつまでも観ていられる。ただ、奥の方にある梵鐘が気になり、視線がそちらへいってしまうので、梵鐘も見やすい位置にしてほしい。
寺は比叡山の横川で修行した元三大師を本尊にしていて、厄除けやおみくじ、だるま市などお布施以外のコペルニクスの大転換的な対価型寄進方法で参拝客を集めた。また、集まった参拝客に対して、そばを振舞う店を参拝道に配することで、願掛けと名物のある最強タッグ寺院でもある。鉄道の最寄り駅は三鷹駅や調布駅、吉祥寺駅などでバスでの移動が必要なのが難点だが、都心の高層ビルに囲まれた中で観る国宝と違って東京なのに田舎に来て観ている気持ちになれる。