国宝で一番荒っぽく扱われている建物はどれか。
それは間違いなく石手寺の二王門である。門の見えにくいところにいろいろ小物をしまい込んでいたり、パンフレット類が無造作に置かれていたり、一見すると本当に国宝なのかと疑ってしまう扱いだ。
そうなるのも無理はない。四国八十八か所巡礼地の一つであると同時に、松山最大、つまり四国最大の観光名所の道後温泉に近い。おまけにミシュランガイドの観光地の一つ星を獲得したとあって、国宝に頼ることなく集客できる。次から次へと参拝者が来る。まさに行列ができる寺に他ならない。
本堂や護摩堂なども重要文化財で、ゆっくりと観賞するとそれなりに楽しめる。ところが、多くの参拝者は巡礼のため次へと足早に寺を去る。これでは国宝をじっくり見せる必要がない。文化財よりお参りに来た証拠だけが重要なのだろう。その思いが国宝の扱いに反映されている。国宝や重文だから丁寧に扱えとは言わないが、もう少し主張させてもよいのではないか。