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【徳川美術館】名刀紀行 短刀 無銘 正宗(名物 庖丁正宗)

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この秋に京博が開催する京のかたな展。京で作られた刀たちを全国各地から集めまくった展示会で、博物館が企画する刀の展示としては質と数ともに最大級のものとなっている。そして、武家の棟梁が本気を出せばという展示が名古屋の徳川美術館で開催されている名刀紀行である。

武士の魂とも言える刀は戦国の世が終わった後、実用よりも贈答の部類として重宝されてきた。代替わりの時に献上あるいは下賜するために、刀自体にランクづけされた。名物はその上位のランクで、所有することが名家の証ともなった。

さて、尾張の徳川家が本気で伝来の刀を展示したら、どうなるか?

答え:所有物は国宝や重文となったものがごろごろあり、刀の展示とはこうすべきだと最高の手本を見せてくれた。京博では山城系のみを集めた展示となっていて、それはコンセプトとしてはあり。ただ、刀と言えば五箇伝と呼ばれる五つの産地があり、それぞれに特徴のある作り方をしている。それを地域ごとに分類して、なおかつ名品ばかりを展示できる徳川美術館の圧倒的な品ぞろえが素晴らしい。

なかでも目を見張ったのは名物の庖丁正宗。観て圧倒されたのは、その薄さ。刀は打撃の要素も含まれるため、ある程度の厚さが必要である。だが、短刀は刺すことを前提にしていることから薄くでも大丈夫。その薄さに加えて刀身に刀形の透かし彫り、鍬形を陰彫されており、出来上がった段階で二つとない美術品の域に達したすばらしい逸品である。正面からはもちろん裏面や横からでもじっくり観賞できる見せ方もよかった。

徳川美術館所有の国宝刀全品を惜しげもなく展示しており、他の武家系展示館も見習ってほしい太っ腹な見せ方であった。

国宝拝観者たちの夢、それは千件越え。 毎年、国宝指定数が増えているので、容易にはなってきているものの、一つの目標である。 900件を超えた辺りから新規の拝見ペースが落ちているが、果たしていつ達成なるか。