国宝を観る

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国宝を楽しむため、いろいろ書いています。 勉強不足でも観れば分かる。それが国宝だ。

【金剛寺】大日如来坐像ほか

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天野山金剛寺には数年前に訪れたことがある。その時は金堂の改装工事中で、完成した暁には再訪を誓って拝観しなかった。そして、2018年3月、晴れて金堂の大修理を終えてお披露目と相成ったので訪問した。綺麗になった金堂をお祝いするかのように開花が早かった桜が咲き誇っていた。

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元の金堂を全く知らないが新たに朱に塗られ、飾り彫りも色彩鮮やかにしたことは一目で分かる。内部も綺麗な朱で塗られており、創建当時もこんな雰囲気だったのならば、住民からはかなりハイカラな建物に思われていたであろう。

さて修理期間中、金堂の仏像は京博と奈良博へそれぞれ調査のため貸し出されていた。その調査結果を踏まえて、1年前に国宝に指定された。大日如来不動明王降三世明王の三体は博物館で観た時はとても大きく、近くで観たこともあり見下げられているイメージがあった。とくに明王に至っては激しい表情で、畏怖さえ感じていた。ところが、金堂へ鎮座した三体はしっくりとくるスペースに落ち着きを取り戻したが如く親しみすら感じる雰囲気を醸し出していた。もちろん離れて観ることしかできないので、物理的に明王たちの手の届かない、ほどよい距離があったため恐怖感が取り除かれた点はあるかもしれない。しかし、それ以上に大日如来が天蓋などによる独特の雰囲気を作り出している演出が金堂内の空間を制圧している。これこそ現地でないと見ることのできないもので、博物館では感じることのできない。

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真言宗御室派に所属する金剛寺は国宝・重文クラスの寺宝がある。先月まで開催されていた仁和寺展でも書跡の出品があった。また、楠木正成の本拠地にも近く、奉納された南北朝時代の甲冑などもある。それらは本坊で観ることができると思ったが、きっちりとした宝物館はなく蔵を改装した程度の家屋に申し訳なさげに陳列されていた。それでも貴重な仏像や書などだったので、もう少し力を入れて展示してもよいと思った。

一方で、本坊の庭園は素晴らしかった。木々を丸みを帯びたカットと苔と岩、松の高低差と配色を踏まえた池泉庭園の立体感は庭師の努力の賜物だろう。今回は桜の季節で奥に満開の桜もあり、見ごたえ十分であった。

国宝拝観者たちの夢、それは千件越え。 毎年、国宝指定数が増えているので、容易にはなってきているものの、一つの目標である。 900件を超えた辺りから新規の拝見ペースが落ちているが、果たしていつ達成なるか。