薬師如来と脇侍は、もともと修行場となる山の上にある上醍醐に安置されていた。だが、上醍醐では十数年前の落雷による火災が起こり文化財としての保管議論が起きた。時々下山していた(もちろん人の手によって運ばれた)像は議論の末、保管環境にすぐれた霊宝館で展示することとなった。
山中にある堂の復興には時間とお金がかかる。その費用を稼ぐため、霊宝館のもっとも目立つ位置に鎮座している姿を観ることができる。如来は持ち運びできるちょうどよい120センチメートルぐらいで檜の一木造り。持ち運びには20名で1日かかったそうだ。定朝誕生前の作品で、小一時間かかる上醍醐にあったならば登山の疲れも消えてしまうほど、穏やかな表情である。