鶉は愛玩動物として古事記にも登場していたぐらい昔から飼われていた。また、鳴き声もよく、江戸時代には武士の間で鳴き声を競う「鶉合わせ」なるものが開催された。
そんな馴染み深い鶉だが、中国でもおなじように人気があり、それを題材にしたのが同図である。写実的に細かく描かれたおり、毛並みの良さが手に取るようにわかる。見るからに高貴な人に飼われていた鶉なのだろう。
掛け軸だったものを茶室に合う大きさに加工したのだろうが、それがかえって鶉の主役観を増す演出となっている。南宋画で、東山御物とくれば牧谿などとともに、足利義教の御眼鏡にかかった逸品。