国宝の山越阿弥陀図は禅林寺と京博所蔵のもの2点ある(二つは全く別物)。今回、出品されているものはもともと朝日新聞社の創業主である上野精一が所有していた。それを精一没後50回忌あたる1970年に京博へ譲渡、現在に至っている。一方で譲渡対価の寄付金で仏教美術研究所上野記念財団が作られ、仏教研究の助成などに尽力している。
個人で国宝を所有しているものが何点かある。大きな問題として相続時には課税対象になることだ。国宝とはいえ、資産には変わりがなく特例は認められない。昭和天皇が崩御した際にも、御物など一部を除いて課税対象になった。三の丸尚蔵館はそれらの寄贈品から成り立っている。美術品を観る上で、不必要な情報かもしれないが、伝来を知って観ると味わいが変わってくる。そんな作品の一つである。