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国宝を楽しむため、いろいろ書いています。 勉強不足でも観れば分かる。それが国宝だ。

【国宝】慧可断臂図 雪舟筆

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国宝展・Ⅰ期の見どころは雪舟の国宝指定全6作品勢ぞろい。早い段階から発表があり、展示会全体のアピールポイントにもなっていた。水墨画の巨匠である雪舟は単独でも展示会が開催できる超ビックネームである。その傑作6点を贅沢に1室に見渡せる形で展示している。

6点を見て思ったのが、各作品の大きさがバラバラ。小さい物から長い巻物風、掛け軸の長尺や巨大なものと、スケール感がまるで違う。どの作品もそうであるが、本やネットで見ているだけでは、実物の大きさが分からない。ましてや特集などで部分掲載されている場合は、アップになっていることが多いので観てがっかりすることがたまにある。(北海道の時計台や高知のはりまや橋のように)

その点、慧可断臂図は想像していたよりもサイズが大きい。天橋立図が緻密なため、一番大きいのだろうと想像していたが、観てみないと分からないものだ。ダイナミックな構図とシンプルな達磨大師の対比が印象に残る出来栄えだった。雪舟の直線と斜線、筆使いの濃淡など、特徴のある書き方が随所に出ている。この書き方によって慧可が左手を切断して弟子入りを志願している図が、本来は悲壮感が出ていてもおかしくないのに感情を全く感じさせない。ほかの雪舟水墨画にも言えるのだが、一見写実的ではあるが、恐ろしく記号化されている。どこかで見たことのある風景のように思えるだけで、実際にはあり得ない図となっている。ところが、部分部分で記号化されたものを描いているため、超現実にまで昇華されている。雪舟の頭の中でのみで揃っていた作品群を一度に観ることで、超現実主義者の思想の一端を感じることができる1室だ。

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(おまけ)庭園には記念撮影用に顔をくり抜いた慧可断臂図があり、雪舟がこの展示会の一番のスターであることを物語っている。しかし、左手を持って来られてどんな顔をしてよいのやら…。

国宝拝観者たちの夢、それは千件越え。 毎年、国宝指定数が増えているので、容易にはなってきているものの、一つの目標である。 900件を超えた辺りから新規の拝見ペースが落ちているが、果たしていつ達成なるか。