国宝を観る

国の宝を観賞していくサイト

国宝を楽しむため、いろいろ書いています。 勉強不足でも観れば分かる。それが国宝だ。

観た

書巻(本能寺切) 藤原行成筆 本能寺

墨書は紙に書かれるため、保管方法によってはぼろぼろになる可能性がある。崩れいく紙に対しては裏打ちなどして補修することで文化財として保管に耐えうるようにする。本能寺切はかなり傷みが激しいが補修でなんとか耐えていた。虫食い状態の文字もあるが判…

日本書紀巻第二十四(岩崎本) 京都国立博物館

日中書の名品と題して京博で開催している企画展ではあるが、中国文化を受けた写本や拓本が多く出品されている。そしてようやく日本オリジナルの内容が登場した。 日本書紀は古事記と並び、奈良時代に編纂された日本神話や古代の歴史を伝えている歴史書である…

新撰類林抄巻残巻 伝空海筆 京都国立博物館

新撰類林抄は詩人の作をテーマごとに分けた詩集である。三筆の一人、空海が書いたとして箔をつけることがあるが新撰類林抄巻もその部類で、空海の筆さばきとは違う。とはいえ、平安時代初期に写されたもので、筆跡はすべて唐様の草書体で書かれている。収録…

大般若経巻第三百四十八(長屋王経・和銅経) 太平寺

奈良時代に藤原家との戦った側の痕跡は経典に残っている。 太平寺に残る大般若経は、和銅5(712)年の記載がある経典である。この経典は長屋王(壬申の乱の勝者である天武天皇の長男・高市皇子の子)が発願した。文武天皇(天武天皇が父、息子が聖武天皇)…

千手千眼陀羅尼経残巻(玄昉願経) 京都国立博物館

京都国立博物館の道路を挟んだ向かい側にある蓮華王院(三十三間堂)には先月行ったばかり。千体ものある千手観音だが平安時代当時のオリジナルは124体しか残っておらず、鎌倉時代に入って追加されたものが大半だそうだ。 日中書の名品で出ていた千手千眼…

浄名玄論 京都国立博物館

京都国立博物館は平成館1館での運用が続いている関係で、常設展示や企画展示が特別展のない期間にしか開くことができない。東博や九博のように別にスペースがあったり、奈良博の仏像館のように特別展に関係なく展示できるスペースがほしい。 夏真っ盛りの8…

春日権現験記絵 高階隆兼筆 宮内庁三の丸尚蔵館

リニューアル工事を進めていた三の丸尚蔵館の一部開館が11月3日に決まった。全面開館は3年後の令和8年を予定しているので、巡回展はそれまで続けばと思う。 さて、今夏の三の丸尚蔵館所蔵の巡回先は岡山。岡山県立美術館の全館を使っての展示会だったが…

東寺百合文書 京都府立京都学・歴彩館

京都文化博物館で〜室町幕府滅亡後450年〜足利将軍、戦国を駆ける!と題した企画展が開催されていたので見に行った。 室町幕府の滅亡と言われてもピンとこないのは、その後に活躍した織田信長や羽柴秀吉、そして話題の徳川家康の印象が強すぎるためと、徳川…

病草紙 痔瘻の男・毛虱

三十三間堂から智積院へ行った。となると京都国立博物館に寄らない手はない。とはいうものの、プチ京の国宝まつりとなっている「日中 書の名品」は8月8日からの開催だったので、国宝の展示は少な目。 そんな中、地獄・鬼・天狗の名品ギャラリーで病草紙が…

桜図 長谷川等伯 智積院

2023年4月4日、新しく智積院に宝物館が誕生した。これまでも寺宝を公開する蔵?はあったものの、温度・湿度管理が行き届いたものではなく、文化財保護の観点から現代的な保管機能を有した器を準備することが急務だった。 新しく出来た宝物館では開館を記念し…

千手観音坐像 蓮華王院

蓮華王院こと三十三間堂は見どころが多いため、ついご本尊の存在を忘れがちである。 本尊は千手観音坐像で、千手観音でかつ坐像の国宝は葛井寺の本尊と三十三間堂の2体だけである。葛井寺の観音様は大きさ的には150cmに満たない(座っているため)が、三…

二十八部衆像 蓮華王院

鎌倉仏師の代表である慶派作品は興福寺や東大寺など南都仏教界に多く残っているイメージがある。力強い作風で平安から鎌倉、貴族社から武家政権へ変わるシンブル的な位置づけと捉えていた。三十三間堂にも力強い慶派作品がある。二十八部衆は筋肉の躍動感が…

千体千手観音立像 蓮華王院

唯一無二の言葉がふさわしいのが千体千手観音立像だ。人の大きさぐらいの千手観音立像がずらりと約千体(寄託されているものが一部あるよう)並ぶ。一体でも地方の寺なら本尊クラスとなるところ、千体となると圧巻としか言いようがない。本堂の構造はこの千…

風神・雷神像 蓮華王院

蓮華王院(三十三間堂)の風神と雷神は国宝彫刻物で同じ指定内にも関わらずかなり離れた地位で鎮座している。二十八部衆や千体千手観音立像を護るようにお堂の端と端に置かれているためだ。入り口近くに風神、最も遠い折り返しの場所に雷神がある。豪華な千…

本堂 妙法院蓮華王院

京都国立博物館には企画展や特別展が開かれる度に訪れている。しかし、道路を挟んで向かいにある通称が三十三間堂、蓮華王院にはしばらく行っていなかった。 京都の夏で一番盛り上がる祇園祭が終わった翌週の週末に訪れた。熱さもあって観光客はそこそこの入…

熊野懐紙 「深山紅葉・海辺冬月」 陽明文庫

織田信長が本能寺で亡くなり豊臣秀吉が天下統一を果たし、関ケ原の戦いを経て徳川家康が江戸幕府を開き、泰平の時代が到来した。運命は長寿であった家康に味方した。 幕府を開いた後、駿府で(形だけの)隠居生活をしていた。西洋的な物品を集めたようで久能…

太刀 銘長光 号大般若長光 東京国立博物館

どうする家康の「どうする」は選択肢があって初めて出てくるフレーズ。個人的には武田信玄と相まみえた三方ヶ原の戦いが最大のどうするだったと思う。信玄の病状が悪化し難を逃れたが、当時の家康はどうすることもできなかった。再戦となる長篠の合戦では家…

上杉家文書 米沢市上杉博物館

NHK大河ドラマ・家康に合わせた展示会が巡回中である。梅雨時期に三井記念美術館で開催を終え、家康生誕の地・岡崎へ来ていた。この後、静岡で開催される予定だ。 岡崎の開催場所は岡崎市美術博物館であった。初めて行く場所で、ホームページのアクセスガイ…

五重塔初層内陣扉絵 海住山寺

南山城地域には古刹が多く、古い仏像が残っている。 浄瑠璃寺や岩船寺以外にも国宝の十一面観音立像が本尊の観音寺や、同じく国宝の釈迦如来坐像が本尊の蟹満寺など、仏像好きにはたまらない地域である。恭仁京跡がある加茂駅周辺も見どころが充実している。…

阿弥陀如来坐像 浄瑠璃寺

浄瑠璃寺の阿弥陀如来坐像の修復を終えたことを祝した展示会が奈良博で行われている。聖地南山城(みなみやましろ)と題して、京都と奈良の境目に集まる仏像たちが集結している。 京都と奈良をつなが道は山を越えて移動する方法と、木津川など水運を活用した…

新羅善神宮

大津市歴史博物館館の近く、大津市役所の裏側にあるのが新羅善神宮である。三井寺の管理下にあるが、非常に閑散としている。というより無人の場所だ。県庁所在地の市役所で結構な都心にある国宝建築物であるはずだが、休日に行くと人に出くわすことがほぼな…

智証大師関係文書典籍 園城寺

智証大師関係文書典籍 がユネスコの世界記憶遺産に認定されたことを記念して大津市歴史博物館で緊急の企画展が行われた。 智証大師こと円珍は延暦寺第五代座主で若き頃に密教を学ぶため唐へ渡った。その時に発行された渡航許可書(パスポート)を現代まで大…

無著・世親菩薩立像 興福寺

国宝彫刻の最高傑作は無著・世親菩薩立像だと思う。他の祖師像はどこか仏頂面だが、無著・世親菩薩立像は写実的に彫られた表情がなんともアンニュイでそれでいて玉眼がさらに鋭さを演出している。北円堂内にあるので威厳を感じるが、単独で展示していたら高…

木心乾漆四天王立像 興福寺

興福寺には国宝の四天王立像が4組(16体!?)も存在している。東金堂内にあるのが平安初期の作品。中金堂にある四天王立像が2017年まで南円堂にあったもの。南円堂のものは仮金堂にあったものがスライドして置かれている。この3組はすべて木造である。 …

弥勒如来坐像 興福寺

北円堂の中心に座るのは弥勒如来坐像である。運慶作とされていたが、慶派一門の源慶が中心となって制作されたようだ。写真の看板で右側が弥勒様となっており、南円堂の本堂には不空羂索観音菩薩坐像(左)に比べると装飾が少なくシンプルな像になっている。…

北円堂 興福寺

北円堂は日本に現存する八角円堂の中でも屈指の美しさを誇る。堂内の仏像たちがすべて国宝であり、それを護る建物として相応しい出来栄えだ。 お堂の由緒は興福寺の創建者である藤原不比等が亡くなって1周忌の721年に元正天皇が長屋王に命じて建てられた。…

密教法具 嚴島神社

奈良博で珠玉の仏教美術が開催されていた期間中、広島ではG7サミットが開かれた。各国の首脳は宮島に渡って、厳島神社で記念撮影に応じていた。 奈良博でも厳島神社の密教法具を展示していた。神社でなぜ密教と一瞬思ってしまう。昔は神仏習合が当たり前だっ…

粟原寺伏鉢 談山神社

2023年春の奈良国立博物館での特別展は管内工事の影響で開催がなかった。そのため、西新館での名品展と仏像館のみの営業だった。特別展がないにもかかわらず、館内の来館者数は結構な数で、人気の展示物には少しではあるが人だかりも出来ていた。まあ、…

古今和歌集 伝藤原行成筆 曼殊院

曼殊院の黄不動明王像を見終わったあと、京都国立博物館の企画展を見に行った。古筆とかなの美と題して、曼殊院の寺宝も公開されていたからだ。 古筆とかなの美では京博が所有する国宝で、藤原伊房筆の万葉集と手鑑・藻塩草も展示していた。藻塩草は普段なら…

黄不動明王像 曼殊院

京都の東北部、修学院離宮近くにある曼殊院で国宝秘仏の黄不動明王の特別公開が行われていた。曼殊院の悲願であった宸殿が150年ぶりに再建復興された記念での公開である。 曼殊院は京都でも外れにあることから、外国人観光客で賑わう中心部と違って休日でも…

国宝拝観者たちの夢、それは千件越え。 毎年、国宝指定数が増えているので、容易にはなってきているものの、一つの目標である。 900件を超えた辺りから新規の拝見ペースが落ちているが、果たしていつ達成なるか。