国宝を観る

国の宝を観賞していくサイト

国宝を楽しむため、いろいろ書いています。 勉強不足でも観れば分かる。それが国宝だ。

書跡

【密教マンダラ】金剛般若経開題 空海筆 奈良国立博物館

金剛般若経開題は空海が密教の立場から能断金剛般若経を解釈した草稿。京博にも断簡が残っている。文字は草書と行書が混じっていて、行間に加筆や文字訂正の跡がある。考えながら書いた書で、空海も草稿が世に出て国宝になるとは思っても見なかっただろう。 …

【密教マンダラ】灌頂歴名 空海筆 神護寺

神護寺の寺宝・灌頂歴名は国内の密教創世記を語るにはなくてはならない書である。 遣唐使として大陸に渡った最澄と空海。エリートとして渡航した最澄は国内に戻ってからは南都仏教に対抗する新興教団を作り上げた。片や空海は紆余曲折はあったが、密教を持ち…

【密教マンダラ】聾瞽指帰 下巻 金剛峯寺

聾瞽指帰は空海が若かりし頃に仏教の素晴らしさを説いた書である。聾瞽指帰の名称は最初の上巻に書いた言葉から抜粋して命名されている。なので、下巻のみの展示は少し残念。鳥獣戯画図でウサギやカエルがいない丙巻・丁巻のみの展示のようだ。 レア★☆☆観た…

四天王寺縁起 四天王寺

四天王寺の中心伽藍は入場にお金がかかる(ただし、縁日である21日、22日は無料で入れる)。そのため、参拝者の多くが参るのは六時堂である。その六時堂が写真のように改修工事に入った。戦後に復興されたお堂でかなりボロボロであったのは参拝した誰しもが…

一字蓮台法華経 龍興寺

2023-24にまたがる奈良博の名品展は西新館のみの展示となっている。そして、新たに修理された文化財の展示が年末年始の短期間のみとなっていた。せっかく修理されたのだから、もう少し長めの展示があってもよさそうだが、借り物がほとんどのため難しいのだろ…

明恵上人歌集 京都国立博物館

明恵上人生誕850年の節目に、生誕の地である和歌山県立博物館で特別展示を開催していた。明恵上人と言えば、後鳥羽上皇から下賜された栂尾に高山寺を開山したことで有名である。都心から離れた山奥で明恵が説いたのが、華厳の教えと密教との統一・融合する厳…

顕浄土真実教行証文類(坂東本) 東本願寺

大谷大学博物館で開催された古典籍の魅力は宗祖親鸞聖人誕生850年・立教開宗800年記念であることから真宗大谷派・東本願寺の至宝「顕浄土真実教行証文類(坂東本)」(略称:教行信証)が展示されていた。 教行信証は親鸞の著作であり、数ある浄土真宗系が共…

浄名玄論 京都国立博物館

親鸞生誕850年の記念展が春先にたくさんあった。その最後を飾るのが大谷大学博物館の古典籍の魅力である。 大谷大学博物館は開館20周年を迎える。と同時に立教開宗800年も兼ねている。記念展示会では同館が保有する重要文化財10件を前後半に分けて展示すると…

風信帖 東寺

真言宗立教開宗1200年記念として、教王護国寺(東寺)の宝物館では秋の特別公開はなかなか見ることが出来ない寺宝が出ている。前期は両界曼荼羅図で真言密教で欠かすことができないアイテムにして、東寺のものはその原型となる。 宗教都市となっていた平城京…

史記集解 杏雨書屋

杏雨書屋が入る武田道修町ビルは元は武田薬品工業の本社ビルだった。武田薬品工業は1781年に道修町で薬種の仲買商を始めたが、1925年に武田長兵衞商店を設立して会社化した。その3年後の1928年に本社ビルとして現在の武田道修町ビルを完成させた。本社移転後…

説文解字木部残巻 杏雨書屋

杏雨書屋の国宝・重要文化財展示の中で、一番見ごたえのあったのものは説文解字木部残巻であった。巻物状のほとんどを開いて見せていた。この国宝は2019年冬に開催された顔真卿-王羲之を超えた名筆で展示されているのを見たことがある。その時は一部の公…

毛詩正義 杏雨書屋

大阪のど真ん中、北浜と船場の間にある道修町は薬に関わる企業の集積地となっている。塩野義製薬や小野薬品など昔ながらに本社を置いている企業もあれば、田辺三菱製薬や大日本住友製薬など合併によって社名は変われど、道修町発祥の流れから社屋を置く企業…

遺偈 清拙正澄筆 常盤山文庫

やまと絵展を見た後、東洋館へ行く。こちらの8室では創立80周年を記念した常盤山文庫の名宝展が開催されていた。前後期で入れ替えがあり、常盤山文庫の国宝・重文クラスを惜しげもなく展示していた。そして、そのすべてが撮影OK。なかなかない機会だが、見た…

禅院額字幷牌字 東福寺

東博の展示会場では大人気だった通天橋から臨む紅葉の風景。手前に欄干を設けて橋にいるように撮影できるディスプレイになっていた。ただ、ここは京博。しかも秋開催。本物を見に行くことが気軽にできる。写真も良いが実物が一番だ。ただ、ピーク時にはすご…

義楚六帖 東福寺

東福寺展で展示していた仏手は写真OKで映える展示物だった。これは今は無き京都大仏の遺物で、東福寺内に安置しているが普段は非公開のものである。金箔がだいぶ残っていることから、奈良の大仏同様、出来た当時はキンキラキンだったことが想像できる。なお…

太平御覧 東福寺

東福寺展では1階の出入り口付近の展示物のみ撮影が許されていた。写真の右側の蓮弁はいまは失われている京都の大仏が乗っていた台座の装飾物。左は釈迦如来で一般的な寺院にある大きさの仏像である。対比すると蓮弁がかなり巨大であることが分かる。蓮弁は…

古事記 宝生院

公立の美術館や博物館のリニューアルが続いている。横浜みなみみらいにある横浜美術館は2021年から始まり来年再開予定。大阪市立東洋陶磁美術館は22年2月から始まり、こちらも来年春再開予定。天王寺にある大阪市立美術館も昨年からリニューアル工事に入っ…

金剛般若経開題残巻 空海筆 京都国立博物館

平成館のレストラン側の出入り口から庭園へ抜けると石垣があった。平成館がゆるやかな斜面に建っていることは七条駅から正面玄関までの道中で何度も足で体感していたが、目に見える形では斜面を石垣で補正して建てられていることを初めて知った。これはこの…

真草千字文 伝智永筆

コロナ禍の影響で京博平成館のレストランが閉店していた。昨年のことだったようだ。お客が入っている時は覗くのためらっていたレストランから見える庭。閉店しているので平成館西の出入り口から見ると十三重石塔が展示されていた。京博の敷地内にはいろいろ…

徽宗文集序 高宗筆 文化庁

天皇自筆の文書を宸翰と言う。中国の皇帝自筆はなんと言うのだろう。そのような疑問を持ちつつ、南宋初代皇帝である高宗筆・徽宗文集序を眺める。 南宋の初代皇帝という肩書を見ると下剋上的な活躍があったようにも思えるが、金軍侵攻で父である徽宗をはじめ…

漢書楊雄伝第五十七 京都国立博物館

菩薩処胎経巻が東晋の竺仏念によって訳された。 それより古いことが書かれているのが漢書である。中国の歴史が詳しく(決して正しくではない)伝わっているのは歴史書を編纂し、残しているためでこの点は素晴らしい文化である。 今回の展示で出品されている…

菩薩処胎経巻第二 知恩院

日中の書の名品と題された企画展だが、すでに中国では失われてしまい日本に伝来した古写経によってのみ知ることが出来るものがある。知恩院の菩薩処胎経はすでに大陸では失われた経典で、奥書に西魏大統16年(550年)と記されていることから、伝来してきた裏…

書巻(本能寺切) 藤原行成筆 本能寺

墨書は紙に書かれるため、保管方法によってはぼろぼろになる可能性がある。崩れいく紙に対しては裏打ちなどして補修することで文化財として保管に耐えうるようにする。本能寺切はかなり傷みが激しいが補修でなんとか耐えていた。虫食い状態の文字もあるが判…

日本書紀巻第二十四(岩崎本) 京都国立博物館

日中書の名品と題して京博で開催している企画展ではあるが、中国文化を受けた写本や拓本が多く出品されている。そしてようやく日本オリジナルの内容が登場した。 日本書紀は古事記と並び、奈良時代に編纂された日本神話や古代の歴史を伝えている歴史書である…

新撰類林抄巻残巻 伝空海筆 京都国立博物館

新撰類林抄は詩人の作をテーマごとに分けた詩集である。三筆の一人、空海が書いたとして箔をつけることがあるが新撰類林抄巻もその部類で、空海の筆さばきとは違う。とはいえ、平安時代初期に写されたもので、筆跡はすべて唐様の草書体で書かれている。収録…

大般若経巻第三百四十八(長屋王経・和銅経) 太平寺

奈良時代に藤原家との戦った側の痕跡は経典に残っている。 太平寺に残る大般若経は、和銅5(712)年の記載がある経典である。この経典は長屋王(壬申の乱の勝者である天武天皇の長男・高市皇子の子)が発願した。文武天皇(天武天皇が父、息子が聖武天皇)…

千手千眼陀羅尼経残巻(玄昉願経) 京都国立博物館

京都国立博物館の道路を挟んだ向かい側にある蓮華王院(三十三間堂)には先月行ったばかり。千体ものある千手観音だが平安時代当時のオリジナルは124体しか残っておらず、鎌倉時代に入って追加されたものが大半だそうだ。 日中書の名品で出ていた千手千眼…

浄名玄論 京都国立博物館

京都国立博物館は平成館1館での運用が続いている関係で、常設展示や企画展示が特別展のない期間にしか開くことができない。東博や九博のように別にスペースがあったり、奈良博の仏像館のように特別展に関係なく展示できるスペースがほしい。 夏真っ盛りの8…

東寺百合文書 京都府立京都学・歴彩館

京都文化博物館で〜室町幕府滅亡後450年〜足利将軍、戦国を駆ける!と題した企画展が開催されていたので見に行った。 室町幕府の滅亡と言われてもピンとこないのは、その後に活躍した織田信長や羽柴秀吉、そして話題の徳川家康の印象が強すぎるためと、徳川…

熊野懐紙 「深山紅葉・海辺冬月」 陽明文庫

織田信長が本能寺で亡くなり豊臣秀吉が天下統一を果たし、関ケ原の戦いを経て徳川家康が江戸幕府を開き、泰平の時代が到来した。運命は長寿であった家康に味方した。 幕府を開いた後、駿府で(形だけの)隠居生活をしていた。西洋的な物品を集めたようで久能…

国宝拝観者たちの夢、それは千件越え。 毎年、国宝指定数が増えているので、容易にはなってきているものの、一つの目標である。 900件を超えた辺りから新規の拝見ペースが落ちているが、果たしていつ達成なるか。