籠の網目部分を工芸品として加工し、金銀で鍍金したもの。唐草文様は蔓植物が曲がりくねりながら無造作に伸びていく様を表したもの。古代ギリシャやメソポタミアで意匠として使われていてシルクロードをを通じて、唐・朝鮮半島経由で日本にもたらされた。唐草文様というと緑をベースに文様の入った風呂敷がおなじみだが、実物を売っているところや使っている人は見たことない。泥棒がほっかぶりしているイメージがあるので、昔は誰もが簡単に手に入れることができたアイテムだったが、一時的なブームが去って見かけなった部類かもしれない。さて、神照寺の籠は奈良博でも展示されていて、こちらも華やかな草花が細工されていた。
【京都名品展】小葵浮線綾文様衵 熊野速玉大社
染物エリアは、一式指定の熊野速玉大社のものが出品。
熊野信仰の総本山、熊野速玉大社へ寄進された名品の数々。最近、いろいろな博物館で陳列しているので観る機会が多い。今回の京博でも寄託している名品が出品。
文化財になった場合、保管をきっちりできる場所(建物)の確保が必要になる。寄託することで、その場所の確保が不要になり、文化財保護の整った施設で保管される。しかし、手元から遠くへ保管場所が変わるので、常時公開ができない。和歌山県の新宮まで見に行くのはかなり遠いので、都会の博物館での公開はありがたい。昔の人が熊野詣の願掛けで奉納したものが、京都に戻って保管というのは、奉納者にとって願掛し甲斐がない。ただ、もう千年近く経っていることを考える願いが成就していなければ叶わない願いだったということなのだろう。
【京都名品展】菩薩処胎経 知恩院
知恩院の御影堂の大修理が今年ようやく終わり、1年かけて仏具荘厳の搬入や堂内設備工事などがあり、来年4月に晴れて落慶法要が行われる。この御影堂は国宝で、国宝建築は改修ラッシュで、東西の本願寺や二条城、滋賀の延暦寺、奈良の薬師寺東塔などあちこちで大修理が行われている。国宝を維持管理し、次世代に繋ぐ大切な事業だが、その間は観ることができない。国宝好きにとっては再会するまで待ち遠しい日々を過ごす。
その知恩院の寺宝も京博に寄託している。菩薩処胎経は釈迦の涅槃(他界)前後を題材にしたもの。ほかの経に比べて効果が高いと言われ、CM風に言うならば当社比10倍(個人による感想)以上の効果があるそうだ。この菩薩処胎経の2から4巻は西魏時代550年のもので、世界最古の伝世写経である。色々な宗教の経典がそうだが、教祖が自身で伝えたものより、文才のある弟子たちが残したもののほうが流行る。象徴としての教祖とそれを支える名も並みプロジューサーがあっての宗教なのだ。