国宝を観る

国の宝を観賞していくサイト

国宝を楽しむため、いろいろ書いています。 勉強不足でも観れば分かる。それが国宝だ。

【平等院】金銅鳳凰

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写真は模造品。

鳳凰堂の由来にもなった鳳凰は宝物館で展示されている。外に出ているのは梵鐘と同様に模造品。雌雄一対で鳳凰であるが、展示場のように間近で観てもよく分からなかった。屋根の上にあると大きさが分からないが、神社などの狛犬より少し大きいぐらいだった。

そもそもこの鳳凰に関して、日本で暮らすほとんどの人は無意識に観たことがある。それは1万円札に描かれている鳳凰がそれにあたるためだ。十円玉の建物が宇治のものであることはよく知られているが、案外鳳凰の方は知られていないようだ。持っている人は出して確認していたのが、印象的だった。ぜひ、現地に行くときは持っていきましょう。(観光ならそれぐらいは持ってるだろう)

【平等院】鐘

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写真は国宝の模造品。

極楽浄土、末法思想、池泉型寺院がへ西暦1000年頃に流行った。釈迦入滅から1000年が経ち世の中が変わる終末という考えが流行、当時の権力者である藤原氏阿弥陀にすがる寺院が乱立した。仏教がまだまば権力者のものであったこともあり、国家鎮護のためから一部の権力者の心のよりどころへと変化したのもこの頃かもしれない。

その浄土信仰を建物で表したもののひとつが宇治にある平等院鳳凰堂である。もともと藤原家の別荘があった場所で、京都からも近く絶好の立地となっている。その梵鐘が国宝指定を受けている。本物は院内にある宝物館に展示している。天女が描かれており、一突きするだけでも天国へ行けそうな図が散りばめられている。

【仁和寺展】両界曼荼羅 子島曼荼羅

本日で惜しまれつつ終わる仁和寺展。本サイトで一番アクセス数があったのは両界曼荼羅の記事だった。

図は誰もが見上げる大きさと、紺色のベースに金で書かれた図は観る者を圧倒する。それを子島曼荼羅は暗闇の中で燈火によって浮かび上がる工夫がなされている。夜陰でのお勤めをぜひ見て観たい。

両界曼荼羅は放射(外への広がり)と渦巻(中心への内包)を幾何学的に表現した。幾何学の語源は土地測量で、曼荼羅は古代土木工学の結晶。神秘性を差し引くと、自然を法則化している。天才には分かる暗号なのかもしれない。

子島寺は高取城の城下町にある寺だ。高取城は奈良にあった城で、明日香村への通り道にある日本三大山城のひとつ。現在は城跡しかないが、飛鳥時代に造られたという猿石があるなど、ハイキングコースとなっている。いまでこそ、自然豊かでのどかな町であるが、国宝に指定されるだけの文化財を恩賜されたり、高低差のある山中に城などを造るだけの財力があった地域になる。今回出品していた御室派の寺院はそれぞれ特徴があり、派閥形成の過程を想像するだけでも面白そう。御朱印集めなどで各寺院を巡礼しても楽しめそうだ。

 

【仁和寺展】千手観音菩薩坐像 葛井寺

運慶展には及ばないまでも、かなりの込み具合の仁和寺展が今週でいよいよフィナーレとなる。御室派の名品が一挙公開とあって、普段見ることができないもの多く、大変楽しめる展示会であった。

前期の初めに三十帖冊子の一挙公開を見に行ったが、目玉である葛井寺千手観音菩薩坐像を見に再度訪問した。普段から月1回の御開帳はあるものの、厨子の中に鎮座しているところを観るので、とても見にくく全体も観ることができない状態であった。今回の展示では360度全方位から観ることができるため、背後までじっくり観察できた。

まず、一番気になる千手は後ろからしか観ることができない手が多数あり、葛井寺でいくら数えても千本に到達しなかった理由が分かった。千手はもちろん木造の彫り物で、背中部分で羽のようにつながれている。腕部分は多少朽ちてきているものもあり、長年の劣化が痛々しい。また、観音菩薩は11面の顔が頭部にあり、後ろ側にある顔を観る機会がなかった。今回の展示でじっくり拝顔でき、これだけで見に行く価値があった。

200年ぶりに東京での御開帳だったそうで、交通機関がこれだけ発達した現代人でも注目する仏像であるので、江戸時代の江戸っ子はさぞびっくりしたことだろう。しばらくして地元に戻って御開帳されることだろうが、東博で観た感動を胸に秘めて拝むことになるだろう。

【東大寺】誕生釈迦仏立像及び灌仏盤

この春、東大寺ミュージアムは一時休館する。メンテナンスもあるが、目的は震災の被災地である東北でのお出かけ展示会を開催するためだ。

そのメインの展示はもちろん誕生釈迦仏立像及び灌仏盤だ。釈迦は仏の道を諭したインド人である。宗教が誕生して広まる過程でいろいろと尾ひれがついて、創始者自身が神格化される。

釈迦は生まれた直後に右を上に、左手を下にして天上天下唯我独尊といったそうである。そんな可愛げのない子供の黄金の像が東大寺にある。花まつりで使われる仏具になるのだが、甘茶をかけるのは憎たらしい口を利く子供を諭すためかもしれない。甘いものが少なかった時代、誕生日に特別な茶の振る舞いは信仰者の喜びとなる。

【東大寺】木造弥勒仏坐像

4年前にハルカス美術館で開催された東大寺展が東北でも開催される。国家安寧を祈念するために造られた官寺・東大寺が震災復興のために一役買うのは自明の理である。なので、寺宝を惜しげもなく展示する。国宝は8件、重文は21件に及ぶ。ただ、東大寺の仏像たちは大きなものが多いため、運べるものが限られてくる。

大きさ的にちょうどよいのが木造弥勒仏坐像になる。定朝の登場以降の型にはまった仏ではない独特の雰囲気がたまらなくよい。なんともとぼけた顔が観ている人々をほっこりとさせる。

國華 洛中洛外図屏風(舟木本) 岩佐又兵衛筆

洛中洛外図屏風といえば上杉家に伝わり狩野永徳が描いたと言われるものが有名である。謎が多いことも魅力の一つとなり、専門書でも書かれた時期、場所などの分析がなされている。

そして、国宝指定の洛中洛外図屏風は永徳以外に、今回出品され東博所有の岩佐又兵衛作がある。岩佐は若冲ブームの次の主役を狙う、奇想の画家の一人として大注目されている作家である。画風の派閥が明確に分かれる以前のため、同時代に活躍した画家の良い部分を吸い上げて作られている。

レア ★☆☆

観たい ★★☆

国宝拝観者たちの夢、それは千件越え。 毎年、国宝指定数が増えているので、容易にはなってきているものの、一つの目標である。 900件を超えた辺りから新規の拝見ペースが落ちているが、果たしていつ達成なるか。