国宝を観る

国の宝を観賞していくサイト

国宝を楽しむため、いろいろ書いています。 勉強不足でも観れば分かる。それが国宝だ。

【国宝】搨王羲之書(孔侍中帖) 王羲之筆

書聖・王羲之の摸本。聖とあがめられるのだから、その書は一目しただけで誰もが素晴らしいと納得するものだと思っていた。ところが、草書が走り書きのように見えて、これまで見た固い楷書体の墨蹟類の方が筆の達人のように思えた。

空海の書でもそうだが、1000年以上たって現存しているのが奇跡であって、それだけで価値がある。漢字文化圏で絶大な影響を与えた人物の書がⅢ期の後半にのみ登場した。続くⅣ期は日本独自のかな文化が醸成された時代の三蹟が揃い踏み。文化の変化を観て感じたいラインナップである。

【国宝】鶉図 伝李安忠筆

鶉は愛玩動物として古事記にも登場していたぐらい昔から飼われていた。また、鳴き声もよく、江戸時代には武士の間で鳴き声を競う「鶉合わせ」なるものが開催された。

そんな馴染み深い鶉だが、中国でもおなじように人気があり、それを題材にしたのが同図である。写実的に細かく描かれたおり、毛並みの良さが手に取るようにわかる。見るからに高貴な人に飼われていた鶉なのだろう。

掛け軸だったものを茶室に合う大きさに加工したのだろうが、それがかえって鶉の主役観を増す演出となっている。南宋画で、東山御物とくれば牧谿などとともに、足利義教の御眼鏡にかかった逸品。

【国宝】雪松図屏風 丸山応挙

等伯の松林図とは対極をなす力強さ。狩野派の描く荒々しい太い幹とは一線を画す繊細さ。太い幹に繊細さを兼ね備えたハイブリット型の松図である。

そもそも松の幹になる部分は下地のままで、なにも描かれていない。風景の基礎となる金泥を塗る段階で幹となる部分を残し、その上に葉っぱや幹の境目などを書き加えて完成させた。残った下地はすべて雪に見える。墨と金泥、下地の3つの要素を見事に計算し尽くして仕上げた二色図の最高傑作である。

また、松林図屏風と雪松図屏風を対面に配置した展示もすばらしい。屏風は大きいので離れて観るため、左右に首を振るだけで対比して楽しめる。

【国宝】源氏物語絵巻 柏木

2年前、徳川美術館開館80周年記念で、源氏物語絵巻国宝全巻を展示する企画展があった。五島美術館のものと合わせて展示する企画で、徳川美術館が西暦で末が5の年、五島美術館が末が0の年に行われているそうだ。つまり5年おきに開催されているようだ。

今回の国宝展では徳川美術館の柏木(三)がⅢ期、竹河(一)がⅣ期に展示される。東京と東海地方での特別企画展を観てみたくなる名品。日本で一番有名な恋愛小説を絵で楽しむ。昔の日本人も漫画が好きだったのかもしれない。

【国宝】不動明王像(黄不動)

曼珠院の秘仏。傷んでいたため、最近まで保存修復作業を行っており、久しぶりの展示となった。腹部分に清めのための仏画の痕跡が修復作業中に見つかったことは大きなニュースとなった。

それを確認できるかじっくり観察したが、予想通り分からない。なにせ修復作業をするまでは伝説はあったが観ても分からなかったものである。秘仏であるので、じっくり見るにはまたとないチャンスなので、なんとか腹の仏を確認したい。

【国宝】松林図屏風 長谷川等伯筆

南宋画の影響を色濃く受けた長谷川等伯山水画が中国のまだ見ぬ風景であるのに対して、松林図は日本の見ることができそうな風景である。最小限の書き込みにも関わらず、奥行きだけでなく温度まで感じる。もし、周りに人がいないところで見つめ続けたら、絵に引き込まれてしまいそうだ。

Ⅲ期では牧谿の最高傑作である観音猿鶴図や狩野永徳の花鳥図襖など、時を超えた水彩画の比較が楽しめる。

【国宝】短刀 銘 左/筑州住

美術館や博物館で何本も日本刀を観てきた。それでも刀を観ただけでよさや違いが分からない。

刀や装飾類を含めて100を超える国宝指定がある。装飾類は圧倒的な芸術性で指定されることで納得できる。平安期までの古刀も貴重性で指定されており分かる。ところが鎌倉期以降がわからない。重要文化財と国宝指定の間になにがあるのか。不思議に思う。

しかし、短刀 銘 左/筑州住は芸術性と歴史的貴重性を兼ね備えた名品であることが理解できた。見た目で持っていたいと瞬時に思える美しさ。とくに波紋が瀬戸内の白波のように穏やかさがあり、観ていて飽きない。秀吉から2代将軍秀忠、紀州藩へ受け継がれ、歴史の中心にあった刀であることで、国宝指定も納得。

国宝拝観者たちの夢、それは千件越え。 毎年、国宝指定数が増えているので、容易にはなってきているものの、一つの目標である。 900件を超えた辺りから新規の拝見ペースが落ちているが、果たしていつ達成なるか。